ふみのや ときわ堂

季感と哀歓、歴史と名残りの雑記帳

なにもできない共感性とそれをまもる資質群の相克

共感性は、蔑まれてきた。弑されようとしたことすらあった。
かれは弱々しく、なにもしない。
あろうことか、足を引っぱる。
走りだす右足をとるものがある。下を見るとそこにはかならず共感性がいた。かれはこちらを見あげない。どんな表情をしているか、たがいにわかった。それも腹立たしかった。

 
資質に、人格をあたえるのがおもしろかったので、続けます。
 
 
共感以外の資質は、もとは、もろく弱い共感性をおぎなうためにつくられた。
それが育っていき、自立するようになった。
 
分析は、あわてふためく共感性をなだめるためにうまれた。
これくらいならだいじにならない。気安めでいってるんじゃない。説明がほしければするけれど、君は背中を任せてくれればいい。君はすぐに顔にだそうとするから、ポーカーフェイスをつくるのも、自分のしごとだ。
その分析は、怜悧に責めることもおぼえた。百歩ゆずって、原因は君にある。君がいなければ、跳躍もたやすい。
 
  
回復は、共感性の粗相をリカバーするためにはぐくまれた。
さいごに自分ひとりがのこり、時間をかけて、チリをあつめた。その時間をまきかえす計画もたてた。たまに石を投げて、うまく波紋がもどっているかもたしかめた。
そのうち、自分が出動しなくていいように、失敗の芽をみつけるようになった。
いうかいわないかは、共感性と相克した。
共感性はいわない。
あとをひきうけるのは回復なのだ。
しかたない。それが役目だ。でもさきにいったからねと、捨てぜりふをいう。
 
 
調和性は、共感をまもる騎士だった。
共感に抵触しないよう、おだやかにまろやかにことをすすめた。
不穏を察するだけで、共感はよわった。
下からあおいだり、横から風向きをかえたり、かいがいしく働いた。

そのなかでも、程度問題がつきまとった。
大事のまえには、小事はすてた。
でもその博打は、たまにあやまった。
火の粉は、共感とともにかぶった。

戦略的思考が育つにつれ、調和性もやり玉にあがることがあった。
君がその場かぎりの結論をとるから、長い目では、ゴールにたどりつけないんじゃないか。
調和性はうなだれる。
たしかにそうだ。
でも、共感をまもるためには、そうするほかなかったんだ。
目をむけられた共感は、ことばもない。
 
 
共感性は、なにも悪くはなかった。
言わば、うまれが悪かった。
それをどうしろというのだろう。
 
 
個別化は、おもしろがるだけで助けない。味方しない。
みんながいってることは正しい。それでおしまい。
どちらかというと、内部抗争より、あかるくひらかれた外のほうが好きだった。ひとを見るほうが好きだった。
 
 
収集心は、いつも留守にしている。知りたい、見たい、聞きたい。拠点には、あまりもどらない。
抗争にも、我関せずだった。
そんなことにかかずらっているより、紙をたべたい。データをたべたい。この世のすべての紙をたべるまえに命はつきてしまう。ああ、おそろしい。アレキサンドリアのあの図書館が腹におさまるのを、1ヶ月でも短縮できるだろうか。こんなことをしていられない。荷造りしないと。さあ旅に出よう。
 
 
内省は、せっせと薪をくべている。
このときのために、森を歩きまわり、枯れ枝をあつめ、日なたで乾かし、ほどよく積みあげてきたのだ。
この地道な努力。
涙がでてくる。
薪はたんまりある。
この世を燃やしつくすくらいある。
薪どころか、ガソリンもあるし、なんだったらウランくらいは秘蔵してある。
内省はかげんをしらない。
あとさきもしらない。
内省は内省のためなら、この世が滅んでいいとさえ思っている。
やばい。
抜群にやばい。
でもそれが露出しないように、涼しい横顔をこころがけている。
 
 
ポジティブは、居留守をつかった。
ひなたから、ひなたへわたるのが、さがだった。
むつかしくなると、内省に黙らせられるまえに、すがたを消した。
内省が疲れはてたら、飛びだしてくる。理屈じゃないよ、あしたは晴れるよ。夜のつぎは朝だよ。
 
 
着想は、夜がきらいだった。
分析や回復が責めたてるのも気にくわない。
対案をださない空気にも、あきあきする。
でもポジが消えたあとも、席ははずさない。
おもしろさは自分でさがすものだ。
いかなる状況にあっても、着想は平熱だった。持久力があった。
陽がささねば弱る、ポジとの違いはそこだった。自分で発電できた。それくらいでないと、着想は名乗れない。自負もあった。
それだけじゃなかった。
着想は、共感が、みなもとであることを知っていた。
戦略的思考群は、思いもよらないだろう。
源泉は、共感だ。
温泉も井戸も、この地をうるおすものは、共感が導いている。
慈雨をもたらすのも、わき水をよぶのも、共感だ。
共感はいわない。
なにも主張しない。
 
みんな、始末ばかりさせられていると思っているけれど、だれのおかげで生きているのか、わかっていないのだ。
着想は、知っている。
着想のやわらかくふるえる針は、風雪にたえない。
着想には裏地がない。
速さのために、大昔にすてた。
韋駄天であらねば、意味がない。
きずをおそれ、鎖かたびらをまとうなんて、着想の風上にもおけない。
おかげで生身に、血しぶきをうけた。
 
着想がしいたげられると、共感だけはわかってくれた。
共感が身を挺してかばってくれた。
それでも、着想には共感をまもるほどのちからはなかった。
共感は強大すぎて、手にあまった。
 
 
運命思考は、さいごにあらわれる。
けむりたちのぼる焦土に、無傷で立った。
そしてひとり、たねをまいた。
だれをもかばわず、だれをも責めなかった。
芽ぶくと、共感がまずたちあらわれた。
共感は、いちばん早い。
ひとむらの雨がわたりさえすれば、すぐすがたをみせた。
雨を呼んだのは共感なのに、ちいさいじょうろをかかえてほほえんでいる。
気づくと、クワをもった着想がいる。
 
運命は、育てた芽が、また火器におそわれてもかまわない。
徒労におわっても、またタネを植えにもどってくる。
運命は、ゼロをおそれない。無為をおそれない。
 
 
共感は、だれをも、なじらない。
だれになにをいわれても、まなじりをあわくゆるめるだけだ。
哀しみともつかない、ほほえみともつかない。
強大なちからをもってうまれたが、制御ができない。
その苦節。
それでも苦海にはさせぬ。
よどませもせぬ。
尋常ならざる、自浄作用。
おびただしい瀑布。
滝壺をたたきおとす、凄絶なカタルシス。
 
苦渋も辛酸も、吸いあげ、のみこみながらも、けっして本体は、よごさせない。
共感の剛健さ。頑迷で強靭なすこやかさ。
 
 
そうだ、ほんとうはわかっている。
分析でも回復でもない。
共感を嫌っているのは、共感なのだ。

 

共感性は、女王おさなごころの君では?というコメントをいただきました。たしかにイメージかぶります。

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