ふみのや ときわ堂

季感と哀歓、歴史と名残りの雑記帳

宇多田ヒカルCan You Keep A Secretの、秘密とはなにか。

この歌がでたとき、はじめてきいたとき、だれもがさいしょに思ったんじゃないかと思う。
シークレットってなあに?
答えは、歌詞にはない。
なのに、22回も言っている。ねえひみつを、まもれる?Can You Keep A Secret?

当時、宇多田ヒカルは公式ブログに書いていた。
「Can You Keep A Secret」の訳は、「だれにもいわない?」だと。
でも、なにがシークレットなのかはいわない。
だれになにを隠しておいてほしいのか、つまびらかにはしない。

つたえよう、やめよう。いってしまおう、でもこわい。
隠そう、いわないといけなくなるときまで。
信じよう、やっぱりやめよう。疑いはいつだってのこる。
約束しても、だれにもわからない。

歌詞はずっと逡巡している。
どうしよう、やめよう、信じよう、隠そう。
この迷いは、wait&seeの迷いにも通じている。
どうして信じきれないのか、それはリスクがあるからだ。

彼女の著書の『点』から。

友達について、人を信用するのが怖くなる気持ちを書いていたんだけど、たどり着いた結論は「疑いはいつまでも残り、だから信用することに意味がある」ってこと。
疑いがなくて、誰でも信用することが普通だったら意味はない。
そこに疑いがあるから、私は人を信じるんだろうなって。
だから、疑念とか疑問とかを持つのは悪いことだけではないと思う。
なぜなら、疑いは、人を特別に信用することを可能にさせるから。

この部分は、Can You Keep A Secretの根底にも流れている。
wait&seeのリリースは、2000年4月、Can You Keep A Secretは、2001年2月。
このとき彼女は、だれを信じていいのか、なにを恃みとしていいのか、迷いのなかにいる。

彼女に、こたえは出たのだろうか。
この2曲がおさめられているアルバム、DISTANCEのタイトル曲でも、おなじことを想起させる歌詞がある。
「気になるのに聞けない」。
この曲でも、また、ひととひととの距離を歌っている。
ただ、タイトル曲になるだけあって、あとでシングルカットされてFINAL DISTANCEになるだけあって、一歩ふみだしている。

約束どおりじゃないけれど、もう一度やりなおそう。
いまなら間に合うから。守れないときも、もう一度。

歌詞は、さいごになんどもリフレインする。
これが永遠ではありえないと知っているから、いまいっしょにいたい。
永遠ではありえないから、いま、いっしょにいたい。
そのうち、distanceも、だきしめられるようになるから。

ふたたび、『点』から。

すでに自分はこの世界の一部なのだから、万物と共感、融合することは、決して自己の喪失ではない。
その帰途に、音楽が位置する。(略)
歌を歌うことは、人であるために必要なことのように思える。
メロディーは、誰かの心の原風景。
懐かしい場所からのメッセージ。
リズムは、死へ向かう生命の行進の音。
歌は祈り、願い、誓い。
音楽は、慈悲。
それ以上、音楽の難しいことは知らなくてもいいと思う。

 

Can You Keep A Secret?